SDGs 「日本語が無くなる日 SDGs目標No.4 質の高い教育をみんなに」
私たちは日本語を話しています。日本国内の出来事はほぼ、日本語で解決すると思います。読んだり、書いたり、話したりするときに相手が何語を話すのか気にする必要はほぼありません。そんな日本語が無くなる日をみなさんは想像したことがあるでしょうか。
今日は「自分の使っている言語がなくなる」についてイギリスを例に考えていこうと思います。
1997年年末のイギリス北部スコットランド。大都市エディンバラからさらに300km北上するとネッシーで有名なネス湖に近いインバネスが見えてきます。高緯度地域の為、昼過ぎにもかかわらず、既に薄暗くなりつつあるインバネス博物館・美術館を私は訪れていました。博物館の展示品に関する説明はとても興味深いものでした。なぜならどの説明も上段は英語、下段は見たこともない言語が並んでいたからです。気になって近くの学芸員に尋ねてみたところ、なんだそんなことか、といった風に答えてくれました。
「ああ、これね。これはゲール語です。私の祖母は話していましたが、私は話せないし、よくわかりません。西のスカイ島ではみんな話してますけどね。」
ゲール語? 今は話されていないと思われる言葉でありながら、なぜ博物館の展示品の説明は2か国語(?)表示になっているのか? イギリスは実は多言語国家だったのか? 確かに本屋の外国語コーナーには"Scottish Gaelic(スコットランドゲール語)"というタイトルの辞書が存在し、ページをめくってみると博物館で見たものと同じ言語が並んでいました。「辞書まであるのに、誰も話していない言語ってなんだ?」少しでもこの言語について知りたかった私は高かったにもかかわらず購入してしまいました(笑)。
そのぐらい不思議な言語だったのです。どう考えても書けないし、綴り通りの発音ではないものが多いのです。参考までに一例を紹介します。左から右へ順に、日本語、英語、ゲール語となっています。読み方は私が聞いた音です。
・エディンバラ Edinburgh Dùn Èideann (ダンエディーン)
・インバーネス Inverness Inbhir Nis(インバニュス)
・私はスカイ島から来ました。 I came from Isle of Skye. Thàinig mi às an Eilean Sgitheanach.(ハ ミ アス アリーンア スキーアノホ)
ゲール語が衰退した原因はWikipediaによれば、以下のような経緯があったようです。
"ゲール語は18世紀中盤(1746~)にキルトやバグパイプとともに禁止され、使用が再び許された後も学校における英語教育の徹底が図られた結果、その使用は徐々に衰退したが、現在もスコットランド西海岸ならびにヘブリディーズ諸島などで話されている。"
さて、2008年に再度インバネスを訪れた時には、街のいたるところに英語・ゲール語の2言語表記が見られるようになっていました(冒頭写真参照:地名。上段英語、下段ゲール語)。これはスコットランド人が自身のアイデンティティを再認識し、未来に伝えるための行動が1997年当時より活発になっていることの表れであったのでしょう。この活動は6年後の2014年9月18日にスコットランドのイギリスからの独立の是非を問う選挙につながりました。この選挙に当たっては、スコットランドの人は失われつつある自分たちの言葉を街の至る所で見るたびに、それらが自分たち自身であることを何度も思い出したに違いありません。現在ゲール語は、存続と消滅の狭間で揺れ動いているようです。
2020年1月23日BBC放送
"スコットランド西部の島々ではゲール語は新入生の既定科目になる。"
2020年7月2日BBC放送
"ゲール語が心のふるさとである島々で、存続の危機に"
イギリスだけでなく、世界中で様々な言語が話され、変化し、あるものは消えようとしています。
「日本語は1000年後には無くなる」こんな予想をどこかで見たことがあります。
私たちはその時、何語で話していることでしょう。英語なのでしょうか、他の言語なのでしょうか。辞書に残った日本語を見て「昔、話されていたんだって」と話しているか、「今日は日本語の授業があるんだ」と習うものになっているのでしょうか。
今の世界において英語は利便性が高い言語として、日本でも小学校からの英語教育が行われています。
ただ、私は英語以上に母国語とその背景にある文化に対して関心と誇りを持ってほしいと思います。これは日本が日本語でほぼ全てのことができる国であることが世界的に見てどのくらい恵まれていて、大切なことなのかを再認識し、その背景にある日本文化を守り続けていく意識を持つことが、世界の他の国々を尊重し理解することにもつながると思います。
そして何よりも、日本語が無くなる日が来ないことを願います。
*本内容はSDG's No.4の細則4.7の達成につながると考えます
4.7 2030年までに、持続可能な開発と持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民および文化的多様性と文化が持続可能な開発にもたらす貢献の理解などの教育を通じて、すべての学習者が持続可能な開発を推進するための知識とスキルを習得できるようにする。
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