カンゾウについて・その1

カンゾウは漢字で甘草と書き,中国では漢の時代に書かれた最古の本草書『神農本草経』の上品に収載され,陶弘景が書いた『名医別録』では別名として「国老」としている.また,ギリシャのテオフラトス(B.C.287〜372)やディオスコリデスの著書にも記録されている.薬能として「五臓六腑の寒熱邪気を主り,筋骨を堅じ,肌肉を長じ,力を倍す.金瘡腫,毒を解く」とあり,胃腸機能を整え緊張を緩和し,筋肉の急激な緊迫による疼痛や筋肉の引きつりなど急迫症状を緩和鎮痛し,現在では緩和,緩解,鎮咳,鎮痛,去痰などに使われる薬剤に配合される.漢方では,甘草湯,炙甘草湯,甘草麻黄湯,四君子湯,麦門冬湯,補中益気湯など約150処方に配合される重要な生薬である.日本へは奈良時代に遣唐使によって導入され,正倉院に現存する.室町時代末には生の植物が渡来したことが『ぶつるいひんしつ』(1763)に記されており,1525年頃には甲州に植えられた記録があり,現在も「甘草屋敷」と呼ばれている山梨県塩山市の高野家で栽培保存されている.
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