認知症と肝疾患って関係あるの!?
12月になりました。イベントや年末の準備に追われがちな月です。人と会って食事をしたり、お酒を飲んだりする機会も多くなり、改めて健康が気になる月でもあります。
食事やお酒を楽しむと、肝臓の数値が気になる方もいらっしゃるでしょう。近年、日本国民の3人に1人が、肝疾患のひとつである脂肪肝を発症しているとされています。今回は、肝疾患と認知症の発症に関係があるかもしれない、というお話です。
<認知症(アルツハイマー病)とは?>
アルツハイマー病(AD)は全世界で約2,000万人が罹患し、先進国での死亡原因の第4位です。発症原因は不明ですが、アミロイドβ(Aβ)の脳内蓄積が主な原因とされています。治療薬はまだ開発されていません。
<非アルコール性肝疾患(NAFLD)>
肝疾患は「酒飲み」の病とされてきましたが、近年は飲酒を伴わない、食べ過ぎによる非アルコール性肝疾患(NAFLD)が増えています。NAFLDは脂肪肝から肝硬変、肝がんに進行する可能性があるため注意しなくてはいけません。一見関係のないアルツハイマー病(AD)とNAFLDですが、最近の研究で関係があることがわかってきました。
<認知症と肝疾患はなぜ関係があるのか?>
結論は「脳に溜まっていくAβを、肝臓で解毒できないと認知症を発症する。」です。
今回は2019年の論文 "Liver Dysfunction as a Novel Player in Alzheimer's Progression: Looking Outside the Brain"(肝機能障害はアルツハイマー病を進行させる新たな要因か? 脳の外を目を向ける)<参考 1)>を元にお話しします。
● 肝 臓 の 働 き
肝疾患により老廃物の解毒が不十分になると、体に悪影響が出てきます。認知症の原因物質であるAβの脳への蓄積も、この影響を受けますが、その際、血管が重要な役割を果たします。
● 毛 細 血 管
体内には大動脈の他、毛細血管が存在します。毛細血管は栄養を組織に運び、同時に老廃物を回収する役割を持った薄い内膜でできています。
● 血 液 脳 関 門 (BBB)
脳には血液脳関門(Blood Brain Barrier,BBB)という壁が存在し、悪いものが大切な脳に流入しないように防御しています。
脳のBBBは特別な毛細血管により形作られており、脳の神経細胞はこのBBBを通して、栄養を受け取り老廃物を回収してもらっています。
● 血管の門番 " LRP-1 "
毛細血管の周りには「低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP-1)」が存在し、これが毛細血管での栄養分と老廃物の出入りを制御します。
● 肝疾患と認知症の関係
肝臓はLRP-1を大量に作り供給していますが、肝臓の不調はLRP-1産生を減少させ、物質のやり取りに不具合をもたらします。すると各組織への栄養供給が不十分となり、老廃物が出ていかず蓄積します。脳の場合、蓄積したAβの回収が不十分になり、再び蓄積するというサイクルが繰り返されます。従って「脳に溜まっていくAβを、肝臓で解毒できないと認知症を発症する。」可能性があります。
● 今 後 の 展 望
近年、認知症治療の研究は日進月歩であり、治療薬開発においては副作用軽減の点から中医薬への関心が高まっています。特に生薬「タンジン(丹参)」が注目されており、血管内皮細胞保護、神経保護などの効果が見出されています<参考 2)>。弊社製品の「アスゲン冠丹元顆粒」にもタンジンが含まれていることから、今回の認知症と肝疾患の関係という情報に加えてタンジンの可能性に注視していきたいと思います。
<参考>
1)Liver Dysfunction as a Novel Player in Alzheimer's Progression Looking Outside the Brain Front Aging Neurosci. 2019 Jul 17:11:174
2)Salvia miltiorrhiza: A source for anti-Alzheimer's disease drugs Pharm Biol, 2016; 54(1): 18-24
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