SDGs:プールで出会った外国人から考える、日本の英語対応
SDGs目標No.4、10、11、16、17

私がプールに行ったある日のこと、入口で、外国人の方が利用を断られそうになっていました。係員は、日本語がわからない人に緊急時の注意を伝えられないことを心配していました。
私は英語で間に入り、彼と同じコースで泳いでルールを伝えると申し出ました。そう伝えると、彼は無事に入場できました。でも、その場にいた人の通訳だけで、安全を守れるのでしょうか。今回の出来事から、公共施設の英語対応について考えます。
プールで出会った外国人との会話
入口で交わした会話は、こんなやり取りでした。
安全上の理由から、利用を断られそうになった
- 私 「英語は話せますか?」
- 外国人 「話せます。助けてください。このプールで泳ぎたいのですが、なぜ入れないのでしょうか?」
- 私 「わかりました。係員に聞いてみます。」
- 係員 「利用者の安全を守るため、緊急時には注意を呼びかけます。日本語がわからない方に伝わらないと、対応が遅れて危険です。そのため、今回は利用をお断りしようと思っています。」
通訳を申し出て、入場が認められた
- 私 「緊急時に注意が伝わるか心配なのですね。彼に聞いたところ、ジェスチャーなら大丈夫だそうです。今回は私も同じコースで泳ぎ、ルールを伝えます。それなら利用してもよいでしょうか?」
- 係員 「わかりました。どうぞお入りください。」
彼は仕事でインドから来ていて、3週間日本に滞在する予定だそうです。プールに入ってからは一緒に泳ぎ、休憩中に日本の英語環境について話しました。
彼から見た日本の英語環境
彼は初めて日本に来て、英語が通じにくいことに驚いたそうです。彼の質問と、それに対する私の考えを紹介します。
なぜ日本では英語が通じにくいのか
日本では、学校や役所の手続きから日々の生活まで、ほとんど日本語で事足ります。仕事などで英語を使う人もいますが、日常生活では英語がなくても困らない場面が大半です。
だから、学校で英語を学んでも、使う機会がなければ忘れてしまうことがあります。
先進国なら、国民は英語を学んでいるのでは?
彼は「先進国なら、国民は英語を学んでいるのでは?」とも尋ねました。実際、日本では2020年度から小学校の英語教育が変わりました。文部科学省の案内をもとに、各段階で学ぶ内容を表にまとめました。
| 学校段階 | 学習内容 |
|---|---|
| 小学3・4年生 | 外国語活動 |
| 小学5・6年生 | 教科「外国語」 |
| 中学校・高校 | 外国語科で英語などを学ぶ |
| 大学 | 履修状況や学ぶ内容は人によって異なる |
学校で長く英語を学んでも、話す機会が少なければ会話に慣れにくいでしょう。授業で学んだ年数だけでは、実際に話せるかどうかはわかりません。
公共施設で英語が通じないのは問題では?
彼は「公共施設なのに、英語を話せる人がいないし、表示も日本語だけでした。
職員全員が英語を話せるようにするのは簡単ではありません。それでも、日本語がわからない人に安全上の注意を伝える工夫は必要です。国の「プールの安全標準指針」では、注意や警告の看板・標識を設けることが望ましいとされています。利用案内も、入口近くの見やすい場所に掲示するよう勧めています。ただし、外国語での表示までは書かれていません。今回の一件だけで施設の対応全体はわかりません。その場にいた人がいつも通訳できるとも限りません。
プール側はどうすればよかったのか?
英語を話せる職員を常に置くのが難しくても、できることはあります。施設の規模に合わせて、いざというときの伝え方を準備しておけば、利用者もスタッフも落ち着いて対応しやすくなります。
最低限の英語対応の仕組みは必要だったのでは?
安全ルールの掲示
やさしい日本語や英語、図記号を使った注意事項やチェックリストを用意し、入場前に確認できる場所に掲示する。
監視員向け対応カード
「止まってください」「プールから上がってください」など、緊急時に使う表現を英語や図記号でまとめる。監視員がすぐ見せられるようにしておく。
翻訳アプリの手順
どの端末で何のアプリを使うか、通信できないときはどうするかを決めておく。伝えた内容が相手に届いたか、確認する方法もスタッフで共有する。
掲示物や翻訳アプリの準備・更新には、手間も費用もかかります。まずは緊急時の注意など、優先度の高い情報から整えるのが現実的です。
日本は英語とどう付き合うべきか?
英語を日常の言葉にする必要はありません。でも、必要な場面で意思疎通を助ける仕組みは、施設や地域に合わせて整えておきたいところです。
英語を日常語ではなく、社会インフラとして考える
訪日客や外国人労働者は、今どのくらいいるのでしょう。2026年1月に発表された統計を見てみます。
-
訪日外客数
4,268万3,600人
2025年の年間合計。過去最多
-
外国人労働者数
257万1,037人
2025年10月末時点。届出が義務化された2007年以降で最多
出典:日本政府観光局(JNTO)、厚生労働省(いずれも2026年1月公表)
この先も同じ勢いで増え続けるとは限りません。訪日客や外国人労働者の全員が、英語の案内を必要とするわけでもありません。それでも、観光地や職場では日本語だけでは案内が届かない場面もあります。国際大会やイベントでも、言葉に合わせた複数の案内方法が役立ちます。
日本語は英語に飲み込まれるのか?
英語を使う機会が増えると、日本語の将来が気になる人もいるでしょう。まずは、日本語が今も使われている場面を見てみます。
日本語は今も暮らしや文化に根付いている
日本語は、日常の会話だけでなく、学校や仕事、文化の中でも使われています。身近な場面を挙げてみます。
- 日常生活:家庭や地域での会話
- 教育・行政・仕事:学校教育、行政手続き、仕事、報道
- 文化・創作:小説、漫画、アニメ、ゲームなど
英語を学ぶことは、日本語を手放すことではありません。将来のことは断言できませんが、両方の言葉を大切にしながら使い続けることはできます。
日本語と英語が共存する未来
日本語を大切にしながら、外国語や図記号でも必要な案内を届ける。そんな工夫を少しずつ広げたいと思います。やさしい日本語や翻訳アプリも使えば、日本語がわからない人にも情報を伝えやすくなります。
現地の言葉に、必要な案内を添える
非英語圏のプールに行ったとき、その国の公用語の下に英語の案内があり、私は助かったことがあります。一つの施設での経験ですが、日本でも利用者に必要な情報を、掲示や図記号など複数の方法で伝えられると思います。
今回の件をSDGsから眺めてみると・・・?
これまで議論してきた 「言語・国際化・安全・公共サービス・文化の維持」 というテーマは、SDGsの 1つの目標に当てはまるのではなく、複数の目標にまたがる複合的課題 です。
特に重要なのは 4・10・11・16・17 の5つです。 以下、今回の件が「なぜそのSDGs目標に該当するのか」を表にまとめました。
| SDGs目標 | 該当理由 |
|---|---|
| 4:質の高い教育をみんなに | 国語教育・英語対応・言語の学習機会 |
| 10:人や国の不平等をなくそう | 国籍格差・言語格差・公共サービスの不平等 |
| 11:住み続けられるまちづくりを | 公共施設の多言語対応・安全性 |
| 16:平和と公正をすべての人に | 緊急時の意思疎通・公平な利用機会 |
| 17:パートナーシップで目標を達成しよう | 他国の政策との比較・国際協力 |
私がプールで経験した「英語が通じず利用できない」という問題は、 実は SDGsの複数の目標に関わる"国際化時代の公共サービスの課題" ではないかと思います。
困っている人を見かけたら、できる範囲で手助けを
町で困っている人を見かけたら、できる範囲で声をかけてみてください。言葉が通じにくくても、翻訳アプリや身ぶりを使えば、伝え合えることがあります。声をかけて一緒に確認するだけでも、相手の不安は和らぐでしょう。ひょっとしたらあなたの小さな親切が日本を、世界を変えるかもしれません。
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